
親子に伝えた”夢を持つこと”の価値とは 球心会・王貞治代表が子どもたちへ示した未来への道標
6月14日、明治神宮外苑で開催された「BEYOND OH!PLAY KIDS」。
「一般財団法人 球心会」が主催する本イベントは、子どもたちにとって”野球との最初の出会い”・”野球との再会”を親子で果たした日となった。
このイベントでは体験だけにとどまらない。世界の頂を知る王貞治代表自らがトークショーに登壇し、夢や目標の価値を共有する特別な機会が設けられた。※全3回中2回目
(写真 / 文:白石怜平)
人数なりの工夫で野球を続けた少年時代
神宮球場や軟式野球場・室内球技場を精力的に回り、親子で野球を楽しむ様子を見守っていた王代表。見て感じたことを最初に語った。
「子どもたちはみんな元気に動き回ってくれました。お父さんやお母さんも『こんなに走るのが速かったんだ』とかね、『ボールをしっかり投げられる』という新しい発見があったんじゃないかと思いますね。
そういった意味で、子どもさんの現在の状況を知ってもらうためにも、今日のイベントは良かったんじゃないかと、そう思っています」

ここからは王代表と野球の出会い、そしてその先の夢へとどのようにつながったのか。そのルーツを深掘りした。
「当時は戦争が終わったばかりで、野球の道具もあまり多くありませんでしたが、薪みたいなものでもいいんですよバットは。それでボールもね、軟式テニスのボール。あれだったら全然怪我もしなかったので、それで仲間同士集まって。
野球だと9人必要ですが、我々の時は5人集れば5人なりの野球、7人集まれば7人の野球って、自分たちで工夫してルールを決めてやる。だから自分たちで考えましたから覚えましたよ、野球のことをね」

“世界の本塁打王”がNo.1と評する大谷選手の活躍
球心会は本塁打の世界記録を持つ王代表やイチロー氏といった”世界的なヒーローを日本の野球界・スポーツ界全体で生み出し続ける”ことを目指し、設立された。
今、日本スポーツ界において世界的ヒーローは誰かと問われれば、大半は迷わず大谷翔平選手を挙げるだろう。ここでは王代表にとって大谷選手がどのように映っているのか、抱く印象について語った。
「もうアメリカでもナンバーワンですよ。我々の時代もね、アメリカで試合をやったりしましたけど、アメリカの選手よりも超えてる日本人選手っていなかったですよ。私自身も含めてね。
でも大谷君は世界中のたくさんいる選手の中でもナンバーワンです。特にアメリカ人の選手たちは負けん気が強いけども、目の前であれだけ打たれたらね、もうどうしようもないと、もう脱帽してますよね」

「(花巻東)高校時代は私はテレビでしか見ていませんが、甲子園でもホームラン打ってるんですよね。もちろんピッチャーでもありましたし。
それで、日本ハムに入りました。最初のうちは体ができあがっていなかったですけども、一年一年力を発揮するようになって、投げる球も速くなってきましたし、打球も遠く飛ぶようになりましたよね。その間にウェイトトレーニングなどをしっかりやったのだと思います」
世界で活躍する礎となる“目標設定”
MLBという世界最高峰の舞台で、誰もが達したことのない道を切り拓き続けている大谷選手。王代表は、数ある活躍の要因の一つに、ある行動を挙げた。
「皆さんも覚えている方もいると思うんですけど、(大谷選手は)自分の将来的な考えっていうのを持っていましたよね。しっかりしてきた目標を持っていることが彼の強みだったんじゃないかと、そう思いますね」

大谷選手は花巻東高校に「マンダラチャート」という、思考フレームワークで具体的な目標を設定していたと各所で伝えられている。
3×3の9マスのブロックを9つ組み合わせた全81マスに、「ドラ1 8球団」という大目標を中心に置き、“人間性”・“体づくり“・“スピード160km/h”といった目標をさらに細分化していた。
また人生設計シートも同じく高校時代に作成しており、「26歳でワールドシリーズ制覇」「27歳でWBC日本代表・MVP」といった具体的な目標を掲げ、年は異なれどそれを達成し続けている。
王代表も自身の経験や大谷選手の結果を踏まえ、目標の大切さを参加者全体に向けて説いた。
「大谷君まで明確に作っていなかったですが、我々も目標を持ってやっていました。
目標というのがしっかりしていれば、体を鍛えることもそうだし、勉強することもそこに向かっていろいろチャレンジできるのでね。大谷君は学校の先生やお父さんお母さんから教わったこともずっと実践して、アメリカに行ってからも継続しているのだと思います。
だから体もすごく大きくなってますよね。ウェイトトレーニングや食事の取り方も計画的にやったのではないでしょうか。
食事にしても、自分が好きなものだけを食べていればいいというのではなくて、明確な自分なりの考えを持ってやっているのだと思いますね」

王代表が自ら語った夢への道のり
現役時代に幾多のアーチを描き、監督としても世界一の頂に導いた王代表。野球を通じて半世紀以上もの間、日本中に夢を与え続けている。
観覧する子どもたちを見守る保護者たち、さらに子どもたちの祖父母に当たるその親たちの代も、王代表に夢を与えてもらった人たちである。
その夢を未来へと受け継いでいくべく、王代表は保護者に向けてこのようにリクエストした。
「何かやるには夢を持たないとね。お父さんお母さんにお願いしたいのは、子どもさんに夢を持つ、またそこに向かってチャレンジさせてほしいですね。やっぱり夢に向かってやらなかったら絶対身につかないですから」

王代表自身も少年時代にプロ野球選手になる夢を持って、自らの力で掴み取った。
プロ入り後に荒川道場で日本刀を真剣に振りかざす映像などで、代名詞の“一本足打法”をつくり上げるシーンは今も伝説として語り継がれている。
その血の滲む努力は、プロに入る前からすでに続けられているものだった。
「僕も自分で経験してますけども、むちゃくちゃ練習しましたよ。私はあまり体が大きくなかったのでね。それで腕の力も弱いんですよ。懸垂や逆上がりはできなかったです。
だけど、“とにかくバットを振る”ことはやりました。バットを振った数は人に絶対に負けないと、今でもそう思います。私の頃は今のようなウェイトトレーニングの器材はなかったです。
なのでバットを振るのに必要な筋肉を強くすればいいという考え方でひたすら振りました。
だから何か自分なりのやり方は必ずあると思います。例えば腕立て伏せをしてみたりね。いろいろ方法はあるから、お父さんお母さんたちは子どもさんと話して工夫してね、その目標に向かっていくための道を子どもさんに示してあげたらいいなと思います」

世界中の誰もが憧れるスターが夢への道筋を示したトークショー。これで終わることはなく、監督時代共に戦った愛弟子たちと共に再び壇上に上がると、この日一番の拍手が沸き起こった。
(つづく)
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