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三浦大輔さんの美学が詰まった一本が再現 名匠も明かした“自分のバットを持つ投手”のパイオニア

7月4日(土)にMIZUNO TOKYO内で開催された三浦大輔さん(DeNA前監督)と親子で野球を楽しむ催し。

グラブづくりでは自ら紐を通すレクチャーを直接行うなど、参加した親子と直接交流した。そして5階ではバット削りの実演が行われる。

名匠がこの日のために特別に参加し、現役時代のバットを再現。ここでも三浦さんが一流の野球人であることを改めて示す場であった。

>グラブづくり編はこちら

(写真 / 文:白石怜平)

現役時代のバットを手がけた名和クラフトマンも参加

三浦さんと共に登場したのがクラフトマンの名和民夫さん。

名和さんはイチローさんや松井秀喜さんら名打者のバットを手がけ、現在も近藤健介選手(ソフトバンク)や佐藤輝明選手(阪神)といった現役トップクラスのバットを製作するなど、野球界を代表する名匠である。

子どもたちへ野球を通じた最高の思い出作りに協力するため、バット製造工場もあるミズノテクニクス(岐阜県)からこの日のために参加した。

名和さんが「三浦さんが川上憲伸さんから本塁打を放った(99年10月2日)バットを削らせていただきますので、よろしくお願いします」と挨拶すると、会場が一層沸いた。

バットの名匠・名和クラフトマンも特別に参加した

三浦さんは現役時代に名和クラフトマンにはお世話になったと、ある話を明かしてくれた。

「毎年冬にブランドアンバサダー会議というのがあって、選手たちはミズノの担当者に方に意見を聞いてもらえるのですが、僕はピッチャーなのに名和さんに『バットのグリップをもう少しこうしてほしい』とか、『もう少し焼きを入れてカッコよくしてほしい』とか注文をいろいろして、聞いてもらっていた選手のひとりです(笑)」

現役時代に交わしたやりとりを語った

そして名和さんは、三浦さんのバットの特徴について少し語りつつ後の楽しみを提供した。

「ピッチャーの方が使われるバットとしてはすごく振りやすい形になっていると思います。実際に5階の方で見ていただいて、触れていただければと思っています」

三浦さんの現役時代の使用バットを製作

5階ではバット削りの実演が行われる。削るバットは三浦さんが現役時代に使用していたものを用いた。

削り始めて木が舞う様子を子どもたちは驚いた表情で見入る。削り終えるとバットが他の道具と違う点について説明され、そこには職人としての技が問われる想いが込められていた。

「バットは“慣らし”というのができないんですね。グラブは自分で型をつけるには、慣らしていくことでようやく試合で使える状態になる。スパイクも履き慣らしていくものです。

なので選手の手元に届いた時には100%じゃなくてもいいんですね。自分で 100%にすることがあるので。でも木製バットの場合は手元に届いた時に 100%でないとダメなんですね。そういった意味では、他の野球道具とは一味違うタイプだと感じています」

バットは手元に届いた時に完璧でなければならないと語る

続けて、三浦さんのバットの特徴について参加者に教えてくれた。

「素材の方はホワイトアッシュというものを使っていまして、とても打感が柔らかい材料です。

今プロ野球選手の8割ほどはメイプルという硬い木を好んで使われるのですが、三浦さんは打感が柔らかい方がいいということで、このホワイトアッシュを選ばれました。

あと長さは86cm。ピッチャーの方だと大体84cmか85cmのやや短めのバットを使われる方が多いのですが、三浦さんの場合は86cmという長距離打者と同じぐらいの長さを好まれていました。

重量の方は約890〜910gほど。実はすごく重ためなんですね。今の現役選手の方が使うのは大体880〜900g辺りをご使用になっているので、三浦さんは少し重めのバットを使われていました」

24年連続安打を打てたのも、自らのこだわりそして名和クラフトマンの技があった

途中三浦さんも実演を見に5階を訪れた。バットができる工程を改めて見て現役時代を思い起こすように、

「僕はピッチャーですけども、バッターって0.何ミリの差を感覚でわかるみたいなので、そういった選手たちの要望に細かく応えてくれるのが名人です」と改めて感謝の気持ちを述べた。

三浦さんはプロ入り2年目の1993年から引退する2016年まで24年連続で安打を放っており、この記録は「プロ野球の公式戦で投手が安打を放った最多連続年数」というギネス世界記録に認定されている。

バット談義を交わす姿も見られた

三浦さんが走りとされる「投手自らのバットを持つ」

このようにギネス世界記録を保持している三浦さんは、プロ野球界で“パイオニア”的な役割を果たしていた。名和クラフトマンはこのように解説した。

「ピッチャーの方というのは、球団が持っているバットを使うことが多いんですけども、三浦さんの場合は自分自身のバットを使っていました。先発投手が自分の型(のバット)を持つようになったのは三浦さんが走りではないかと思います。

今ですと中日の柳(裕也)さんやヤクルトの石川(雅規)さんはバッティングが好きなので、ご自身のバットを持っていてそれを使われています」

三浦さんに終了後上記について問うと、野球人としての強い自覚があったことを思い起こすよう、このように答えた。

「ピッチャーだから投げるのが専門ですけども、打席に入れば一打者だと思って立ちました。自分が塁に出ればチャンスが広がるし、結果得点になれば自分も楽になりますから、チームの勝利に少しでも貢献できるようにと思って振りやすいバットを作ろうと思ったんです」

投手として自身のバットを使い始めたパイオニアでもある

そして「僕はバットでも見た目にすごくこだわっていた」と、グラブに続いてその細部を明かしてくれた。

「最初に言った焼きを入れたんですが、名和さんに聞いたら特に反発が変わることはないので見た目の話ですということだったので、僕も焼きがあった方がカッコいいと思ったので、そこから引退するまでずっと焼きを入れました」

バットやグラブなど隅々まで見た目にこだわる理由。それは、三浦さんの“人に見られている自覚”から成るものだった。

「見られてる自覚もありますし、子どもたちに少しでも憧れてほしい。憧れられる存在でないといけないとずっと思っています。僕が子どもの頃、プロ野球選手ってカッコいいなと思っていた世界です。

自分がその世界に入って、今日もたくさんの子どもたちが来てくれましたけども、『僕もプロ野球選手になりたい』『プロ野球、チームを応援したい』と思われるような選手・チームにならないといけないと考えているんでね。
だから見た目にずっとこだわっているんです」

全ての見た目にこだわるのは憧れられる存在としての自覚からであった

道具への感謝が子どもたち育み、上達につながる

イベントを終えた三浦さんは、参加者と会話を重ねたことを思い出しながら充実した表情で振り返った。

「親子の皆さんすごく笑顔でしたし、お父さんお母さんと一緒にグラブへ紐を通したり、一緒に作業したりする姿を見ていい企画だなと思って見ていましたし、僕も本当に楽しかったです」

今回、野球道具が完成するまでの過程を体験することで、親子にとって絆を深める以外にも大きな意味があると三浦さんは考えている。子どもたちにも最後の挨拶で伝えた想いをここで改めて述べた。

「お父さんお母さんに買ってもらったグラブやバットを試合や練習で使うだけではなく、思い入れが変わると思うんですよね。『紐通すのってこんなに難しいのか』。

子どもたちは金属バットかもしれないですけども、バットが出来上がるまでに職人さんがああやって丁寧にね、丹精込めて作ってくれたものであり、想いが込められているのが分かれば、道具も大事にしてもらえると思いますし、愛着も持てると思います。

道具を大事にすることは、それだけ野球も上達できることだと僕は思ってるので、そのいろんな想いが詰まった野球道具で野球を楽しんでもらいたいなと思ってます」

かけがえのない経験を得た子どもたちは野球への第一歩を踏み出す(ミズノ提供)

現在も野球振興活動へ積極的に携わる三浦さんは、「こうしてミズノさんの企画を通じて野球の楽しさを伝えられるのは本当にうれしいです」と笑顔を見せた。

「今日も一緒にやって本当に楽しかったですもん」と再度思い起こしながら、

「僕のファンでね、子どもたちのお母さんとかが『現役の時にサインもらいました』と言ってもらえるだけでも嬉しいですし、その方たちにまた来ていただいて一緒にこのグラブやバットをつくりながら話ができるのは、幸せですよね」と世代を超えて楽しさを分かち合った。

選手そして監督時代のファンである親子との交流も幸せなひとときとなった

そして最後には思い描く野球界の未来にも言及し、今後も野球の発展に向けた想いを語って締めた。

「僕は最終的にはプロとアマチュアの垣根が完全になくなって、自由に交流できる環境になるのが理想だと思っているので、そういう野球界になっていくようにこれからも自分にできる活動を続けていきたいです」

子どもたちの笑顔、職人の技、そして野球を愛する人々が一つの場所でつながった一日。三浦さんが見据える未来は野球というスポーツを通じて、人と人さらには時空がつながる世界を創り上げた。

(了)

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