
親子で紡ぐ一つのグラブ ミズノと三浦大輔さんが伝えた“もうひとつの野球の楽しさ”
7月4日(土)MIZUNO TOKYO内にて三浦大輔さん(DeNA前監督)と親子で野球を楽しむイベントが開催された。
グラブづくりやバット削り実演見学など、参加した100名を超える子どもたちとその保護者が野球の“つくる楽しさ”を体感する時間を過ごした。
現役時代から自ら紐も通していたという三浦さんは参加者に自らレクチャー。そして細部にわたるこだわりも披露する機会となった。
(写真 / 文:白石怜平)
三浦大輔さんと親子での野球道具づくりを体験
この親子での野球体験イベントは、日本を代表するスポーツメーカー・ミズノが主催したもの。
多くのプロ野球選手が愛用してきた伝統のミズノ製グラブを自らの手でつくり、さらにバットがつくられる瞬間を間近で見られる特別な企画。特別ゲストに、昨年まで横浜DeNAベイスターズを率いた三浦大輔さんが登場した。
この日は三浦さんの現役そして監督時代を知るベイスターズファンの親子が直接交流できる機会でもあり、8階のイベント会場では開始前から期待感で溢れていた。

子どもたちは皆“Dear Rookie!”と記された青いTシャツを着用。これはミズノ社がこれを機に野球を始め、そして続けてほしいという想いを込めて作成したもの。
壇上に上がった三浦さんは、最初の挨拶で親子へこのように呼びかけた。
「今日を楽しみにしていました。野球選手としてやはり野球道具というのは欠かせないものですし、今日は一緒に作ったり手に触れてどういうふうにできてるのかを見ることで、この機会に皆さん今以上に野球大好きになってもらえたらと思いますので、一日よろしくお願いします」

グラブづくりでは三浦さんも紐通しに参加
グラブづくりでは紐通しの実践を行い、スタッフからのレクチャーを元に親子の共同作業で一つひとつ紐を通していった。
複雑な紐通しに苦戦した時は、スタッフが駆けつけしっかりとサポート。誰一人取り残されることのないように見て回りながら、丁寧に教え込んだ。


途中から三浦さんも参加し全員に声をかけながら、レクチャーと実演で参加者をサポートした。憧れの存在から直接声をかけられ感激の声を出すだけでなく、自ら紐を通すその姿にさらに見惚れてしまうシーンもあった。
器用さを見せた三浦さんは終盤、保護者たちからの“質問攻め”で囲まれるなど大盛況に。保護者たちからどんな質問があったのかを終了後、明かしてくれた。
「紐の通し方や穴がたくさんあるのでその順番とか、括り方もです。解けにくくするにはどう括るか。
あとは紐も革なので表裏があって、紐の表裏を綺麗に表が結べるようにとか、自分はこの辺をこう見せてたって話を伝えながら、一緒に楽しくつくりましたよ」

野球道具にすごくこだわっていたと語る三浦さん。グラブをどこから見ても映えるように、細部に気を配っていた。
「結び方も綺麗にしていましたよ。表裏という話をしましたが、結んだ時に、きちんと表向きに向くように。裏側になったりしないようとか、とにかく細かいことにこだわりました」

親子で楽しくグラブづくりをしている様子を見守りながら、自身の経験も惜しみなく伝授した。親子で一つのことに取り組むことについて、以下のように意義を述べた。
「お父さんお母さんと一緒に紐通しながらつくって、今度紐が緩んできた時に結び方をまた聞いて一緒にやるというのも、家族や親子の絆が芽生えると思いますね」
プロの一流投手が伝授したキャッチボールの心得
5階でバット削りの実現見学や木材を再利用したメダルづくりを行った後、再び8階へ戻ると三浦さんとのキャッチボールコーナーに。
この場でつくったグラブを早速子どもたちは披露した。始めるにあたり、野球の基本であるキャッチボールについてアドバイスを送る。精密なコントロールでプロ通算172勝を挙げた礎を伝えた。
「子どもの時から大事にしていることは、しっかり狙って投げること。その通りに行かなかったとしても常に狙い続けることです。
例えば土曜日にキャッチボールやピッチング練習で50球投げるとします。その50球をしっかり狙って投げた50球と適当に投げる50球の2つがあるとすると、じゃあ週2回練習したら100球、それを4週・1ヶ月やったら400球になるわけです。
それで試合などで毎月500球ぐらい投げるとすると年間どれぐらいになるかというと、12ヶ月で6000球になる。
その6000球をしっかり狙って投げるのと投げないのでは、1年で6000球という大きな差が出ます。今少し高くなっちゃったと思ったら、次の球をもう少し低く投げるとかも、狙っていなければ次の球をどこに投げていいか分からない。
その差が1年、 2年になると大きく変わってくるから常に1球1球狙って投げましょう」


道具と向き合うことで味わえる「もうひとつの野球の楽しさ」
イベントを終えた三浦さんは野球人生の原点について語っており、野球好きだった父親の存在がルーツであると明かしてくれた。
「親父が野球好きだったので、こっちが欲しいと言わなくても『これいいぞ』って道具を買ってきてくれました。でも野球に関しては厳しい親でしたね。『道具は大事にしろ』とずっと言われていました」
特に印象に残っているのが、軟式野球から硬式野球へ移った頃だったという。革の質も価格も大きく変わる硬式用グラブを手にした時、父親から繰り返し伝えられたのは、日々の手入れの大切さだった。
少年時代から見た目へのこだわりを持っていたという三浦さんは、当時の流行に乗って黒土をグラブになじませて艶を出したり、グラブ用クリーム「ドロース」を塗ったりしながら、自分だけのグラブへと育てていったという。
「硬式のグラブは値段も違いますし、『しっかり手入れすれば自分の手のように使えるようになる』と教えてもらいました。
ドロースの甘い香りは小学生の頃を思い出しますよ。それでよくグラブを磨いていましたね」

自身が親に教わり、道具を大事にしてプロ野球の一流選手へと成り上がって行った。そんな経験があるからこそ、今回のイベントには野球体験以上の価値を感じている。
「手入れをすると味が出ますし、自分だけのグラブになっていく。その楽しさを知れば、もっと大事にするようになると思うんです」
親子でグラブの紐を通し、一つの形へと組み上げる工程を体験した子どもたち。完成した先に試合や練習で使い、そして感謝の気持ちを込めて手入れをすることで、野球人としての未来を切り拓いていく。
「紐ってこんなに硬いんだとか、こうやって一つのグラブになるんだとか、実際に体験すると見方が変わります。
クリームの塗り方一つでも革の雰囲気は変わりますし、手入れすればするほど自分の手になじんでいく。そうなれば捕れるようになりますし、いいプレーも生まれる。その過程も野球の楽しさの一つなんですよね」

父から教わった「道具を大切にする心」は、現役時代を支えた土台となり、引退した今は次の世代へ受け継ぎたいメッセージとなっている。
親子で一つのグラブを完成させたこの日の体験は、子どもたちにとって野球を好きになるきっかけであると同時に、道具を慈しむ心を育む貴重な時間となった。
そして、その道具に込められた職人たちの技と想いは、後半のバットづくりを通してさらに深く紐解かれていく。
(つづく)
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