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【連載】〜若獅子が描く「獅考」の足跡〜 「マインドをシンプルに」 西武・正木悠馬が言葉と感覚の間で得た新境地

上智大学硬式野球部から史上初となるNPBドラフト指名選手として、育成ドラフト6位で埼玉西武ライオンズへ入団した正木悠馬投手。

大学野球界では異色とも言えるキャリアを歩んできた右腕はプロ入り後、自らの目標や現在地を言葉にしながら、支配下そして一軍への道筋を描いている。

その過程で正木がたどり着いた答えは「もっと考えること」ではなく、「考えすぎないこと」だった。

(写真 / 文:白石怜平)

3年後の一軍から逆算して積み重ねる

ライオンズが1年目〜2年目を対象に展開している育成プログラム「獅考トレーニング」では、長期・中期・短期の目標を設定し、それを日々の行動へ落とし込んでいくことを重視している。

ルーキーたちは理想の選手像から逆算しながら今何を積み重ねるべきかを整理していくが、正木が3年後の目標として掲げたのは「一軍で活躍すること」と「信頼される投手になること」であった。

目指す未来を明確にした上で、今シーズンのテーマとして設定したのが「平均球速150km/hキロのストレート」と「決め球をつくること」だった。三軍で主にリリーフとして投げる背番号「134」は、その現在地を語った。

「最近は試合でも球速150km/h以上を投げられていることが多いので、そこを継続しつつ、自分はストレートとスライダーの二つが中心なので、今練習している落ち球をしっかり決め球として使えるようにしたいです」

球速と決め球をテーマに磨きをかけている

毎日書き続ける「マインドをシンプルに」

プロ入り後は大学時代にはなかった経験を一つひとつ吸収し、力へと変えようとしている。

上智大時代は独学でトレーニングを積み、スキルアップを重ねてきた。プロでは最新の設備が揃い、多くのコーチやスタッフからさまざまなアドバイスを受けられる環境があるからこそ、吸収する情報量も一気に増えた。

そんな中で正木が毎日のように書き続けている言葉がある。

「基本的には毎日、『マインドをシンプルに』と書いています」

その背景には、プロならではの環境があった。正木は試行錯誤の過程をこのように振り返る。

「大学ではコーチなどいない状況からプロに入ったので、これまでと全然違う環境で、いろいろなことを教わりながら試しています。

ただ、試行錯誤を繰り返しているうちに考えすぎてしまうことがあったので、一度シンプルに考えようということを意識するようになりました」

新しい知識や技術を貪欲に取り入れることは成長には欠かせない。しかし、その情報量が増えれば増えるほど、自分が本来持っていた感覚が見えにくくなることに繋がっていた。

正木は再度自分と向き合った結果、全てを一気に吸収することから見直して自分に必要なものを抽出する作業を続けている。

言葉にすることで生まれた“ズレ”

獅考トレーニングを通じて、選手たちはルーキーの年から言語化能力も鍛えている。

目標や課題を言葉へ落とし込むことに対して、正木自身は「特に苦労はしませんでした」と話す一方で、実際に取り組む中で新たな気づきも得た。

「言語化すること自体は問題なかったんですけど、逆に言語化しようとしすぎることで、自分の感覚と少しズレてしまうこともありました」

その例として本来感じていることを「より分かりやすく伝えよう」と言葉を選んだ結果、自分の中の感覚とは少し違う表現になってしまうことがあったという。

「感覚としてはこうなんですけど、表現するならこっちのほうが分かりやすいかなと思ってしまって。でも実際には少しズレがあるということもありました」

言語化をする中で得られた気づきもあった

その気づきは、人財開発担当と面談を重ねる中で整理されていく。

獅考トレーニングで講師も務める坂田賢二・カルチャーデザイナー兼人財開発担当たちとも会話し、上で挙げた「マインドをシンプルにしていこう」と言う方向性を共有しながら、自分自身の感覚を大切にすることを改めて確認した。

力まなくても150km/hが出るフォームへ

現在三軍を中心に登板を重ねているが、プロ入りから最も成長を実感している点について明かしてくれた。

「球の質が良くなってきたと感じています。これまでは150km/hを出す時は思い切り投げての150km/hだったんですけど、今は力を少し抑えても球速が出るようになってきました。効率の良いフォームに少しずつなってきていると思います」

掲げてきた球速でも成長を実感している

フォーム改善によって自らの感覚をさらに磨いているが、決して満足などしていない。「もっと精度を上げられるようにしたい」と視線はさらに先を見据える。

上智大学初のNPB選手という肩書は、ドラフト指名時から注目を集めた。
しかし正木自身が見据えているのは名を刻んだことではなく、一軍のマウンドで信頼を勝ち取る未来である。

目標を言葉にすることで日々振り返りを積み重ねながら、自分自身の感覚とも丁寧に向き合う。

その過程でたどり着いた「マインドをシンプルに」という考え方は、育成から支配下、そして一軍へと駆け上がるための確かな土台になりつつある。

日々インプットとアウトプットを言葉と体で重ねる中、正木が新たに発見したシンプルな思考は、さらに次のステージへと導いていく。

(了)

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