
【連載】〜若獅子が描く「獅考」の足跡〜 「体ができれば技術も上がる」西武・今岡拓夢が磨く“未来への土台”
近年、若手の台頭が著しい埼玉西武ライオンズ。その裏側では、一軍の舞台を目指してファームで汗を流す若獅子たちが、それぞれの課題と向き合いながら着実に歩みを進めている。
今回フォーカスするのは、昨年のドラフト会議で育成2位指名を受けて入団したルーキー・今岡拓夢内野手(神村学園高)。
昨年8月には侍ジャパンU-18代表として日の丸を背負い、「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」では大会最多本塁打を記録した強打の内野手である。
そんな背番号「112」が、今もっとも重視しているのは“土台作り”だった。
(写真 / 文:白石怜平)
高卒ルーキーが痛感したプロとの差
今岡は昨夏、甲子園の舞台も経験し、高校球界屈指の大型遊撃手としてプロの門を叩く。そしてプロ入り後すぐに感じたのは、フィジカル面における課題だった。
「やはり力ですね。フィジカルの部分です。周りを見たら、試合に出ている人や上(二軍・一軍)にいる人は体つきが全然違うんですよ。そこを見て、自分はまだまだ足りていないなって感じました」
高卒ルーキーが抱いたその印象は、現場で見守る首脳陣とも重なる。小関竜也ファーム監督も、今岡の持つポテンシャルと二軍、一軍と上がるための要素について以下のように語った。
「今岡はバランス型の選手です。彼の場合は体の強さや鋭さを作っていかなければならないです。バッティングについては高校時代に侍ジャパンへ入った実力があります。
その良さがあるので、今後活かしていくためには体の強さや鋭さ。そこがプロレベルになってきた時に、かなり面白い存在になると考えています」

高校時代までは、自分の感覚や技術で勝負できる場面も多かった。しかしプロでは、その土台となるフィジカルの差が、そのままプレーの差に直結する。今岡はその現実を、スタートラインの段階で理解していた。
だからこそ、今季のテーマは明確だった。
「今年はもう体づくりです。メインはそこですね。体ができたら技術も上がってくると思ってるので、自分に一番足りないところをまず埋めたいです」
体を作ってから技術を追い求める。その順序を理解し、助言を吸収しながら着実に前へ進んでいる。

筋肉量増加と打球速度アップの手応え
その考えを体現するように、今岡はウェイトトレーニングに加えて柔軟性や体幹強化にも積極的に取り組んでいる。
単純な筋力アップではなく、全体のバランスを整えながら、プロで戦うための体を構築している最中であった。
「全身しっかり鍛えています。体幹とか柔軟性も含めてですね。バッティングだけじゃなく、走るのも筋力が必要なので、全部つながっていると思っています」
キャンプから継続してきた成果は、少しずつ数字にも表れ始めている。入団後から比較すると体重は3キロ以上増え、プレー面でも確かな変化を感じていた。
「一番感じるのはバッティングですね。打球の飛び方が変わってきたと思います」
ライオンズの育成現場では、練習時の打球速度など細かなデータも取得・分析している。その数値にも明確な変化が出ていた。
「打球速度を上げることもテーマにしていて、入団してから5km/hほど上がりました。フィジカルが強くなると、やっぱり打球速度も上がってくるんだなって感じています」
フィジカル強化が、そのまま打撃の質へと直結しつつある。数字として可視化されることで、自身の取り組みに対する確信も深まっていた。

打球速度を「限界まで上げる」
ライオンズの育成を語る上で欠かせないのが「獅考トレーニング」。入団1年目・2年目の選手を対象に行われるこのプログラムでは、短期・中期・長期の目標設定を行い、自らのキャリアを言語化して整理していく。
今岡は5月に受講した際、長期目標として「35歳まで現役で野球をやる」と設定した。
「35歳が限界なのかなと思って(笑)」
謙遜交じりに笑ったが、今年19歳の今岡にとっては16年先を見据えた目標でもある。その未来を現実にするために、日々の積み重ねを何より大切にしている。
それを示しているのが、毎日のテーマを設定してその日の取り組みを振り返る“リフレクション”。
「今日のテーマを決めて、そのあと振り返ることをずっと続けています。まだうまくまとめられない時もありますけど、自分の中で整理するのは大事だなと思っています」
自身のアピールポイントを問うと、プロで目指す打者像も交えながら明かしてくれた。
その打撃面では青木智史三軍チーフコーチなどから、「基礎をしっかり作っていこう」と繰り返し伝えられているという。現在取り組む体づくりも、その基礎を支える重要なプロセスである。
「やっぱりバッティングです。そこを一番見てもらいたいです。中距離打者を目指していて、野手の間を抜いていくような、そういうバッターになりたいです」

「トレーナーと話しながら、とにかく打球速度を限界まで上げるっていう意識でやっています。そこは一番こだわっています」
トレーナーや首脳陣の力を借りながら積み上げる基礎力。その一つひとつが、今岡にとっては未来の打撃スタイルを形作るための重要な土台となっている。
まだプロとしてのキャリアは始まったばかり。だが、自らの課題を冷静に見つめ、それに対して明確な意図を持って取り組む姿には、すでに育成選手離れした確かな自覚がにじんでいた。
インタビューを終えると、「これからも体づくり頑張ります!」と力強く語った今岡。未来へつながる一打のために、自らの土台を日々積み上げ続けている。
(了)
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