
【連載】〜若獅子が描く「獅考」の足跡〜 西武・濱岡蒼太が学ぶ「シンプルに考える力」先発登板を重ねて表れた成長の跡
埼玉西武ライオンズの育成4位ルーキー・濱岡蒼太投手が、プロ1年目の夏を迎えた。
高卒1年目のサウスポーは5月の獅考トレーニングを経て、実戦登板に向けたフォーム改造へと取り組んできた。
北海道・美唄でのキャンプや三軍戦の登板で先発としての経験を積む中、心身共に変化が生まれつつある濱岡の“今”に迫る。
(写真 / 文:白石怜平)
創価大戦で先発し、4回無失点の投球
5月時点では「まだ先発のマウンドに立っていない」と語っていた濱岡だったが、8月2日~12日まで行われていた北海道・美唄市での夏季キャンプで実戦形式の先発マウンドに上がった。
ここでは自分本来のピッチングとかけ離れた内容で、初回から苦しんだと語る。初めての環境に身を置いたこともあり、「思うように腕を振れない感覚があった」と振り返った。
しかし23日の創価大戦(CAR3219フィールド)で先発した濱岡は、4回無失点の投球を披露。その試合後に現在地を訊いた際、手応えをこのように述べた。
「美唄キャンプで一度先発した時は腕が振れなかったのですが、今日は初回から自己最速を出すつもりで臨みました。ピンチはありましたけども、腕は振れていたので個人的には良かったと思います」

さらに実戦を重ねる中で、投球内容について考える余裕も少しずつ生まれていった。ただ自分の納得するボールを投げるだけではなく、試合中に自らをコントロールすることにも意識を置いていた。
「個人的に球数が増えてしまいがちになると感じていました。2ストライクと追い込んだ後に三振を取りに行こうと力んでしまい、ボール球を続けてしまうことがありました。
なので強引に三振を取りに行かずに、打たせて取ることも今日は意識していました」
キャンプからワインドアップを導入
マインドセットだけではなく、投球フォームの変化にも成長の要因を見ることができた。キャンプへ向かう前まで二段モーションで投げていた濱岡は、美唄キャンプからワインドアップでの投球にチャレンジ。早速その成果を体感している。
「体重移動や動き全体がスムーズになって、無駄が減りました。今までは一球一球、自分の中で全力で投げないといけない感覚だったのですが、今は『この程度の力でこれぐらい投げられるんだ』というような感覚があります」

また、5月時点では「頭が突っ込まないこと」を課題の一つに挙げていた濱岡。これもしっかりと腕を振ることで、結果的に解消に至ったと明かしている。
「腕を振ろうと思った時に、もし頭が突っ込んでいたら振れる範囲が限られてしまいますし、頭が残っていれば振れる。『腕を振ろう』という意識づけが、結果的に頭が残るようになった感覚があります」
涼しさもある気候の中で練習量をこなせた美唄では、助走をつけて強く投げるトレーニング「プルダウン」などで思い切り腕を振る機会を増やしていた。
これらの練習の甲斐もあって、ストレートの質向上へとつながっていったのだという。

榎田コーチの教えで浸透させる「よりシンプルに」
濱岡の変化を語る上で、一つ大きなテーマとなっているのが「シンプル」という言葉である。本人も「よく複雑に考えすぎてしまうところがある」と自身の特徴を捉えている。
「やるべきタスクを増やしすぎてしまうことがあります。『今これは課題じゃないよね』ということだったり、投げる時に『そんなことまで気にしなくていいんじゃないか』というところまで考えてしまうことがあるんです」
そんな濱岡が今最も多くコミュニケーションを取っているのが榎田大樹ファーム投手コーチである。
「一番会話してるコーチで、話の中で動きだけでなく思考にも修正を加えてもらっています」と榎田コーチの教えを実践している。
そんな榎田コーチは濱岡について問うた際、「『もっとシンプルに考えよう』と繰り返し伝えています」と明かしてくれた。
「彼の場合は、勉学も含めてある程度知識があると思います。ただ、その前にもう少し動きをシンプルに考えて練習しようという話はしていますね」
榎田コーチが重視するのは、フォームの細かな部分を一つずつ修正することではない。ある意識を徹底して浸透させている最中だった。
「まずはストライクゾーンにしっかりと投げることです。ストライクゾーンで勝負しないと打者を抑えられないので、そこから初めて細かい部分が出てくると思います。ストライクゾーンに入れないとゲームにも投げられないので、今一番大事にしているポイントです」

先発マウンドにも立つなど着実に段階を踏んでいるが、榎田コーチも指導を重ねている中で思考に変化が見えているという。
「シンプルに考えて、一喜一憂しないようにはなってきています。ただ、彼にとってはやること全てが経験だと思いますし、難しく考えることもまだあります。なので物事を俯瞰して取り組んでもらえたらと思っています」
課題を着実に消化し、秋の舞台へ
そして、もう一人濱岡を近くで見守る者がいる。獅考トレーニングで講師を務めるなど入団時からの姿を知る坂田賢二・カルチャーデザイナー兼人財開発担当だ。
坂田氏は、濱岡の特徴を「コツコツタイプ」と表現した。
「一つ一つ課題を自分で設定して、着実に乗り越えている印象があります。なので急に大きくというよりは、段階を踏んで成長するタイプではないかと感じています」
元々「目標を立てるのは得意です」と語っており、ライオンズ入団後も獅考トレーニングや日々のリフレクションを通じて、それをさらに高めている。
坂田氏も「目標設定を自分のものにしているかどうかで差が出てきます」と、その姿勢を評価する。
濱岡は直近の目標を5月に言語化しており、この秋に照準を定めていた。
「今はフェニックスリーグでいいピッチングをすること。そこに向けて今も取り組んでいます」

美唄での先発登板やフォームの改造、そしてコーチ陣との対話を通じて磨かれてきた「シンプルに考える力」。濱岡は複雑さを削ぎ落としながら、成長の軌跡を描いている。
秋に描いている目標へ向けて背番号「124」は、今も精一杯腕を振り続けている。
(了)
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