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【連載】〜若獅子が描く「獅考」の足跡〜198cmの元投手が目指す「一軍のクリーンアップ」育成7位・安藤銀杜が磨く“考える打撃”

現在パ・リーグ首位を走る埼玉西武ライオンズ。躍進の背景には練習環境の整備といったハード面、そして「獅考トレーニング」をはじめとするソフト面を連動させた“育てる仕組み”が構築されていることにある。

今季ライオンズに入団した育成選手たちも一軍の舞台を目指し、この環境のもとで成長のプロセスを着実に歩んでいる。

ここでは連載企画として、育成ドラフトで入団したルーキーたちの成長を一人ずつ追いかけていく。

(写真 / 文:白石怜平)

育成環境を整備し、心身両面を磨く

ライオンズ躍進を語る上で欠かせないのは、ドラフト会議において育成指名で入団した選手たちが一軍の戦力を担っていることである。

投手では菅井信也(22年同3位)や佐藤爽(24年同4位)、野手では滝澤夏央(21年育成ドラフト2位)や長谷川信哉(20年同2位)は、育成選手から這い上がって一軍の座を掴んでいる。

また、支配下選手でも昨年49試合に登板し防御率2.09をマークした山田陽翔や、同じく昨年ルーキーながら主軸を打つなど現在も打線の核を担う渡部聖弥など若獅子の奮闘が光る。

このようにドラフトで獲得した選手が早くかつ次々と一軍デビュー、そして定着している要因。それには、球団が長い年月をかけて行なってきた数々の取り組みがあった。

その始まりとも言えるのが、2017年から21年3月まで行われた「西武ライオンズ40周年記念事業」である。

ここでは「ライオンズトレーニングセンター」の竣工やファーム本拠地「CAR3219フィールド(旧:西武第二球場)」の改修、隣接したエリアにサブグラウンドやブルペンを新設するなど、育成環境も大幅に整備した。

一軍から三軍までの全選手がフル活用するトレーニングセンター

ハード面を充実させて終わりではなく、20年からはこれらを活かすソフト面にも力を入れている。

同年には総勢120名に向けた研修を実施し、21年には「人財開発チームを発足。入団1〜2年目の選手を対象に主体性・言語化能力を高める「獅考トレーニング」をスタートした。

主体性ある選手を育成するためには「指導者らもコーチングスキルや“コーチとしてのあり方”を学ぶことが必要である」という考えに基づき、監督やコーチらに向けても研修を行っている。

指導者に向けた研修にも力をいれる(球団提供)

そしてリハビリ組として位置付けていた三軍も22年にメスを入れた。イースタン・リーグの試合に出ない選手も試合に出場できるよう実戦を組み、ファームでも競争意識を高めるべく改革を行った。

上で述べた若手選手の継続的な台頭は、球団が一丸となって数々の取り組みを積み重ねてきたことの証であった。

育成7位・安藤が掲げる”センター返し”

そして今季も新たに入団した選手が一人でも多く一軍の戦力へとなるべく、奮闘は続いている。

一軍帯同者以外のルーキーは獅考トレーニングを5月から行い、今シーズンそして数年後にどんな選手になっていたいかの目標を立て、そこに向けたアクションプランを練ってきた。

背番号「135」を背負う安藤銀杜(ぎんと)は、自らテーマを設定しながら実戦の場でアウトプットしている一人である。

昨年のドラフト会議で育成7位とチームで最後に指名された23歳は、198cm/110kgと恵まれた体格の持ち主。城西国際大から独立リーグ・徳島インディゴソックスを経て、ライオンズの一員となった。

大学時代から投手だったが、球団は打者としてのポテンシャルを評価し指名。未来の主軸候補として育成する方針を掲げている、今季ファーム公式戦で3試合起用した小関竜也ファーム監督はこう期待をかける。

「まだ野手経験が少ないので、実戦を重ねる中で投手への対応だったり自分のバッティングスタイル、形をどんどん作って長打力を磨いていってほしいです」

将来の主軸候補として期待される安藤

安藤は今シーズンの目標を「二軍戦で本塁打を打つ」こと、3年後には「一軍でクリーンアップを担う」ことを設定した。

ライオンズでは1日のテーマを事前に設定し、終えてから振り返る“リフレクション”を毎日必ず行っている。安藤は練習や試合の際に必ず掲げているテーマとして「センターに強く打つこと」を挙げた。

その根拠について、キャンプから取り組んできたことと合わせて明かしてくれた。

「最初はタイミングの取り方をテーマにやってきて、ある程度形ができてきました。次はセンター方向に強く打つことをテーマにして、そのためにどうしたら打てるのかを考えながら日々取り組んでいます。

相手投手に崩された時こそどう打つかが大事ですし、体が早く開いたりタイミングが遅れたりすると、センター方向にいい打球は打てないので、常に意識しています」

崩されても安打にする技術を身につけようとしている

青木智史・三軍チーフコーチや伊藤悠一・人財開発チーフなどとのコミュニケーションも密に行っている。上で述べた“崩された時でも打てるように”という考えは、アドバイスの過程で培われたものだった。

「相手投手は自分を崩してくるので、そうなったとしても粘れたり、詰まって野手の前に落としてヒットにすることを今後やっていけたら、打率も上がってくると思います。

崩されてもホームランにする力は自信があるので、自分のタイミングや形を習得できるようにと言っていただきました」

青木三軍チーフコーチ(写真右)らのアドバイスも吸収する

その意識付けが徐々に結果へと表れる

安藤が継続して取り組むテーマは、結果として表れつつある。それを三軍戦で見ることができた。

5月27日のBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスとの試合で左中間に本塁打を放ち、翌28日の千葉スカイセイラーズ戦でも4打数2安打をマーク。この2本はいずれもセンターから右方向への安打だった。

試合後安藤はテーマを打席で体現できた要因を自らの口で語った。

「練習ではレフト方向に引っ張るのを少しにして、センターから右に打つ割合を多くしています。

試合で追い込まれた打席もあったのですが、無理に引っ張るよりはしっかりとボールを見て、センター方向に狙えば自然とヒットも増えると考えていたので、そこだけを意識しました。

動画でも自分の打席をチェックしているのですが、アウトコースを追いかけてしまっています。なので、軸足で回れるように考えながら今後もやっていきたいです」

5月28日の試合ではいずれもセンターから逆方向への安打だった

自身のテーマやアドバイスを言語化し、打者としての階段を駆け上がっている安藤。まだまだ課題はあると述べ、技術面そして頭脳面の両方で向上心を見せた。

「結果的にヒットになっていますが、タイミングについても改善の余地もあります。二軍や一軍ピッチャーが相手になるともっと厳しくなるので、上のレベルに合わせてしっかりやっていきます。

また獅考トレーニングを通じては、自分の考えていることを伝えるのは難しいと感じましたね。

考えていながらできないこともありますし、言いたいこともまだまだ表現しきれていないので、『どうやって打ったのか?』と聞かれた時に明確に答えられるように高めていきたいです」

自ら課題を設定し、考えを深めながら成長していく姿は、ライオンズが目指す育成の姿が凝縮されていた。安藤と同じく徳島から入団した斎藤佳紳も、常に自身に明確なテーマを課し、マウンドへと上がっている。

(つづく)

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