
イチローさんが完封&2安打と躍動!試合で掴んだ「さまざまなことでヒントになる」新たな発見も
イチローさん(マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が「SATO presents 高校野球女子選抜vsイチロー選抜KOBE CHIBEN」で今年も先発投手として登板した。
投げては127球・17奪三振の快投で完封勝利を挙げ、打ってはリードオフマンとして2安打を放つなど攻守に躍動。
その裏にあった意外な心境を明かすと共に、そして53歳を迎える中でも見つけた新たな発見があった。
(写真 / 文:白石怜平)
イチローさんが新たに発見したメンタル面でのアプローチ
2021年から行われている、「KOBE CHIBEN」と高校野球女子選抜とのマッチアップ。
熱投を終えたイチローさんはお立ち台で、「一年に一度のこの試合が開催できたこと。これに尽きます。これだけ多くのファンの皆さんに来ていただいて感謝しています。ありがとうございます」とスタンドにお礼と想いを述べた。
昨年は右肩の怪我で登板危機もあったが、「体調としてはこの6年で一番いい状態でした。来月53歳になるんですけど、何か自分の中に光を見つけた1日でした」とコンディション面は良かったことを明かした。

球速も昨年よりも最速は1km/h速い136km/hを記録。しかし、それとは裏腹に前日からの心境は意外だったとともに、また新たな発見を見出していた。
「恐ろしい何かに襲われそうな空気を昨日ずっと感じていたんですね。それをポジティブに捉えることが全然できなくて、実は“全力でネガティブな感情”で球場に向かったんですよ。
そうしたら、『自分が想像したよりも悪くはない』って思えて、最低限のところに持ってきました。今日はメンタル面で『そういうやり方もあるんだな』と思えて面白かったですね」

現役時代は負けたら終わりの一発勝負という局面もあったことから、ネガティブなことをポジティブに持っていくように努めていたという。
自身も引退し、全員が楽しみながら真剣に取り組むこの試合だからこそ、この発想が生まれたものだと語ったイチローさん。それは、野球以外にも通ずると感じていた。
「このアプローチは面白いと思います。 一番ダメなところからスタートしたら、いいことが見つかっていくから。
これは野球だけではなくて、どうしてもポジティブになれないことってあると思うんですよ。それは勉強でも仕事でも怖さを抱えて、それが社会人と学生で違ったりもする。
それをどうやって乗り越えようかとなった時に、ポジティブになりたがるじゃないですか。
だけど、一番下に下げるっていうやり方は結構効果的なんじゃないかなって思いました。 これは何かさまざまなことに対してヒントになるんじゃないかって思いますね」

「脅威に感じた」年々高まる女子野球界のレベル
イチローさんは前日からネガティブだったと語っていたが、高校野球女子選抜と対戦し「脅威に感じていたし、実際にめちゃくちゃ嫌でした」と、マウンド上での心境も吐露していた。
高校女子野球の現在地について、このように評した。
「そう思わせるほどのレベルだと思います。毎年そうなのですが、改めて今の自分の全部出そうという気持ちにさせてくれるんですよ。
女子選手たちは対策して臨んでいるのがすぐわかったし、想定してましたけど。もう今後も厳しい(試合になる)ことは間違いないです」
特に今年の選手で絶賛したのが福田稟選手(神戸弘陵)。1番打者として初回に安打を放っただけでなく、第2・第4打席でも安打を放ち猛打賞を記録した。
イチローさんは共にお立ち台に上がった福田選手を「本当にいい選手。スターが生まれたなっていう感じますよね」と讃え、福田選手も感動して涙を見せるシーンも見られた。その後改めて対戦を振り返った。
「何を投げてもダメなタイプっているんですけど、まさにそう。 (イチローさんが)二塁にランナーでいた時にナイスバッティングって声かけたんですけども、そんなこと言ってる場合じゃないなって思いましたね。
最後もきっちり打たれるし、全部やられてるようなものですからね。 それは今まで経験がないから。 いやぁ驚きましたね。 あぁいうレベルの選手が9人いたらって考えたら本当に恐ろしい。
本当ウチ(KOBE CHIBEN)に欲しい。あぁいう一番バッターいいよねって思いました」

そして、高校野球女子選抜からもう一人お立ち台に上がったのが福田選手のチームメートである山戸優菜選手。
先発マウンドに立ち、イチローさん・松井稼頭央さん・廣澤伸哉さん(元オリックス)相手にパーフェクトピッチングを披露した。
イチローさんは「やられました」と最初に述べたあと、ある話を披露した。
「実はシアトルにいる時にインターネットで甲子園の試合(全国高校女子硬式野球選手権)を見ていたんです。今年一番のチームはどこなんだと知りたくて、先に情報入れるのは初めてなんですよ。
決勝で山戸さんが投げていて、(対戦すると分かって)『マジか』と思いました」
そして実際に打席に立った時に感じたことをより詳細に語った。
「変化球って割と長い時間見られたイメージなんですけど、それができなかったんですよ。特に今回の相手ピッチャーはみんなそうだったんですけども、山戸さんはスライダー。すごくいい球でしたし、彼女もウチに欲しいくらいです」

「敬意に溢れる試合」イチローさんが続けたいと奮い立つ理由
今回で6回目となった高校野球女子選抜との真剣勝負。今は高校で野球をやっている女子選手にとって目標であり、特別な試合となっている。それを聞いたイチローさんは、「感慨深いですよね」と率直な想いを口にした。
また、イチローさんの音頭の元集まった「KOBE CHIBEN」というチームを通じても、幸せを感じているという。
この試合を心から継続したいと思う大きな要因について、練習時のエピソードを明かした。
「最近の話なんですけども、ある社会人チームの元監督の方が僕らの練習を見ていて『すごくいい雰囲気で練習していますね』とおっしゃってくれたんですね。それがすごく嬉しくて。
でもそれはなぜかって言うと、女子選手たちのこの姿勢が僕らをそうさせてくれてるんです。
もういいおじさんたちなので、なかなか人に頭を下げることがない人たちの集まりなんですけども、もう頭下げまくりですよ。この年になってこう教育してもらえる幸せ。それがここにはあるので、是非長く続けたいと思っています」
それは、今回も参加した松井秀喜さん・松井稼頭央さん、そして昨年まで4大会連続で出場していた松坂大輔さんも同じ想いを抱いている。この日3人で改めて話していたことがあった。
「毎回思うんだけど、今日も三人で『これ続けたいよね』ってしみじみ言ってました。だってこんな敬意の溢れてるゲームはないと思う。僕はそれが大好きです。
大輔も今年は参加できなかったんですけども、まだまだ出る気持ちはあるので、大輔も今後来てくれることを期待しています」

「『もう明日はどうなったっていい』っていう気持ちにさせてくれる」とイチローさんが語るように、全員が笑顔かつ手に汗握る展開を創り上げ、自身たちが感動を味わいながらプレーしてきた。
対戦相手問わずグラウンドとスタンドが一体となって笑顔と感動を生み出すこの試合は、今後も更なる発展とともに続いていく。
(了)
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