
日米の子どもたちをつなぐ“学びのフィールド” ユニクロ×ドジャースの長期教育プロジェクトが始動
野球場が、子どもたちの未来を広げる「教室」へと変わった。
ユニクロとロサンゼルス・ドジャースは8月20日(現地時間)、ロサンゼルス地域の中学生を対象とした教育プログラム「UNIQLO Field at Dodger Stadium Academy」の第1回を開催した。
会場となったのは、両者のパートナーシップによって新たな名称が付けられた「UNIQLO Field at Dodger Stadium」。
今回は、ユニクロと2021年からパートナーシップ契約を結ぶ世界少年野球推進財団(WCBF)の協力のもと、日本から選ばれた12名とアメリカの子ども30名、計42名が参加した。
世界最高峰の舞台であるドジャースタジアムで、国や言語を越えた学びと交流の時間が生まれた。
(文:白石怜平、写真提供:LA Dodgers)
球団の歴史から学ぶスポーツの社会的役割
「UNIQLO Field at Dodger Stadium Academy」は、ロサンゼルス地域の中学生を対象に、継続的な学びの機会を届ける長期教育プロジェクトである。
球団の歴史を学ぶスタジアムツアーをはじめ、スポーツが社会で果たしてきた役割や、ユニクロが推進するサステナビリティへの取り組みについての講義、さらにはドジャースのフロントオフィススタッフとのQ&Aセッションなどが展開された。
プログラムの冒頭、ユニクロUSA・CEOの安達史紀氏は、参加した子どもたちへこう呼びかけた。
「このアカデミーは、ロサンゼルスの地域社会に対する私たちの長期的な取り組みの一環です。今日は日本とロサンゼルスから生徒のみなさんをお迎えしています。
互いに学び合い、新たな友情を築き、スポーツが文化や言語の壁を越えて人々を結びつける力を実感できる、みなさんにとって素晴らしい一日になると嬉しいです」

最初に行われたのは、ドジャー・スタジアムの舞台裏を巡る特別ツアーだった。
参加者は普段立ち入ることのできないエリアを見学するだけでなく、ドジャースが歩んできた歴史や、球団OBのジャッキー・ロビンソン氏が築いた軌跡について学んだ。
1947年に黒人選手として近代メジャーリーグの扉を開いたロビンソン氏の存在は、スポーツが社会に変化をもたらしてきたことを象徴している。
背負ったその「42」がMLB全30球団で永久欠番となるなど、その功績は世代を越えても色褪せることはない。

安達氏も、子どもたちが学ぶ姿に確かな手応えを感じていた。
「我々としても、ドジャースとのパートナーシップは、単なるスポーツスポンサーの枠を超えたものだと思っています。こうした本格的な学びの機会を、ロサンゼルスの子どもたちに提供できることに、とても大きな喜びを感じています」
当日は天候にも恵まれ、ツアーの途中にはドジャースの選手たちがウォーミングアップする場面も目にすることができた。
「参加したみんなの目がキラキラと輝いていました。実際にスタジアムの中へ入り、選手たちがウォーミングアップするシーンも見ることができて、非常に大きな学びの機会になったと思います」(安達氏)
野球の歴史を知ることに加え、世界最高峰の舞台を間近に感じる。その一つひとつが、参加した子どもたちにとって大きな刺激となっていた。
初めてのアメリカで得た「継続」と「挑戦」の学び
日本から参加した濱田健龍さんは、周囲への感謝を胸にロサンゼルスへ渡った。
「来る前は、周りの人たちへの感謝の気持ちでいっぱいでした。実際に来た時は緊張でいっぱいでしたが、フィールドを見てからはワクワクする気持ちが強くなりました」
その言葉からは、自分一人の力だけでたどり着いた場所ではないことを理解し、支えてくれた人たちへの思いを持って参加していたことが伝わってくる。
実際にドジャースタジアムへ足を踏み入れ、プログラムを体験した濱田さんは、野球の知識だけではない学びを得たという。
「一日を通して野球のいろいろな歴史だったり、人としての部分などを多く学べたと思います」

将来の夢はプロ野球選手。憧れの存在には、ドジャースでプレーする大谷翔平選手の名前を挙げ。フロントオフィススタッフらの話を聞く中で、濱田さんの心に残ったのが、目標へ向けて取り組み続ける姿勢だった。
「一番持ち帰りたいと思ったのは、継続することの大切さと、何事にもチャレンジしていくことが大切だという話です。それを大切にして頑張っていきたいと思います」
プログラム翌日には打撃練習も予定されており、その機会を単なる思い出にするのではなく、帰国後の成長につなげようとしていた。
「教えてくださる方々に感謝して、いろいろなことを吸収したいです。それを日本に持ち帰って、日本でもきちんとできるようにしていきたいと思います」
同じく日本から参加した小山瑚太朗さんにとっても、今回が初めての海外だった。
「アメリカへ行くのが初めてだったので、緊張もありましたが、ワクワクの方が大きかったです」

バスを降り、初めて目にしたドジャースタジアム。その光景は自身の心に深い印象を与えた。
「日本の球場とは違う迫力がありました。今日の一番の学びは、ドジャースの歴史や、これまで賞を取った選手たちのことを知れたことです」
プログラム翌日のクリニックでは、スプリント練習が予定されていた。二度とないかもしれない貴重な機会を前に、小山さんは「もうこんな機会はないと思うので、全力で楽しんで参加したいです」と目を輝かせた。
参加者全員にはプログラム限定のオリジナルTシャツやキャップなども贈られた。同じドジャー・ブルーのアイテムを身につけることも、異なるバックグラウンドを持つ仲間同士の距離を縮め、より一体感を映し出していた。

一日限りで終わらない「5年間で1万人」の挑戦
「UNIQLO Field at Dodger Stadium Academy」は、今回限りの記念イベントではない。
第1回を皮切りに、今後は毎週木曜日に定期開催され、5年間で累計1万人以上の参加を目指す。単発の体験ではなく、地域の子どもたちへ継続的に学びの機会を提供する長期教育プロジェクトとして動き始めた。
安達氏は、初回の成果を振り返った上で、プログラムをさらに発展させていく考えを示した。
「今日はまだスタートしたばかりですので、しっかり振り返りを実施し、さらにより良い活動につなげていきたいと思います。
パートナーシップの一環ですので、ドジャースの方々ともしっかりと話し合いながら、より良い学びの場をつくり、地域貢献ができるように取り組んでまいります」
26年3月にパートナーシップを結んだユニクロとドジャースは、6月に「UNIQLO LifeWear Day at Dodger Stadium」を開催した。
当日は車いすテニス界のレジェンド・国枝慎吾氏が始球式を務め、球場では限定デザインのTシャツを先着4万人に配布。ユニクロの名が冠された新たな球場で、両者が描く未来を多くのファンへ伝える象徴的な一日となった。
そこから約2カ月を経て、パートナーシップは地域の子どもたちに向けた具体的な活動へと進んだ。その反響は社会貢献活動にとどまらず、ユニクロの事業にも表れているという。
「パートナーシップを発表して以来、非常に大きな反響を受けています。デジタルメディアなどでの反響に加え、実際の店舗でもお問い合わせが増えました。このパートナーシップをきっかけにブランドを知り、店舗に来て、商品について質問してくださる方も多くなっています」

今後、さらに多くの来店者が見込まれる中、安達氏は「最高のショッピング体験をしていただけるよう、我々もしっかり準備していきたい」と語った。
一日限りの華やかなイベントではなく、毎週子どもたちを迎え続ける。その積み重ねの先に掲げられた「5年間で1万人」という目標は、ユニクロとドジャースが地域社会と共に歩もうとする意思の表れでもある。
ユニクロとドジャースによる挑戦は、子どもたちがそれぞれの夢を思い描き、次の一歩を踏み出すための新たな入口をつくり始めている。
(つづく)
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