
元ドジャースの守護神・斎藤隆氏が見つけていた大谷翔平の伸びしろ 佐々木朗希への知られざる支援も明かす
5月23日・24日に東京・TOKYO NODEで開催された「Dodger Day in Tokyo 2026」。会場にはワールドシリーズ優勝トロフィーや大谷翔平選手らが実際に使用したメモラビリアが並び、多くのファンがドジャー・ブルーを身に詰めかけた。
このイベントの目玉企画が、かつてクローザーとして活躍したOBの斎藤隆氏によるトークショー。
大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希という“日本人トリオ”が牽引する現在のドジャースをどう見ているのか。同じ東北出身の佐々木選手との知られざる舞台裏のエピソードなど、斎藤氏だからこそ語られる話が披露された。
(取材 / 文:白石怜平)
「実は伸びしろがある」と数年前から公言
大きな拍手を浴びて登場した斎藤氏がまず語ったのは、日本におけるドジャースの変化だった。ここ東京の会場がドジャー・ブルーで染まる光景に目を細めた。
「僕がいた時と今のドジャースはね、表面上は同じかもしれないけれど中身はもう全然違う。今こうやって日本でも盛り上がっているのは本当に嬉しいことです」

かつて野茂英雄氏がパイオニアとして道を切り拓き、その後も斎藤氏らの活躍でその歴史を築いてきた。
斎藤氏がドジャースに在籍したのは2006年から08年。当時36歳で海を渡り、メジャー1年目からチームのクローザーを勝ち取るなど3年間で81セーブをマークした。
そして現在は3人の日本人スター選手を擁してワールドシリーズ連覇を果たし、日本でもドジャースの名を聞かない日はないほど生活の一部として浸透している。
そして話題は、チームを牽引する日本人選手たちの話題へと移る。まずは、今季も投打で圧倒的な存在感を放つ大谷翔平選手について。元MLB投手という視点から、斎藤氏は大谷選手の「投手としての進化」を賛えた。
「打者としてすごいのは、皆さんもうよく分かっていると思うんです。でも投手としては『実はまだ伸びしろが部分がある』と僕は数年前から言っていたんです。
でもここ数試合のピッチングを見ていると、いよいよ何も大谷翔平について語れないぐらい凄いところまで来てしまったな、という実感があります」

斎藤氏が注目したのは投球フォームの変化。以前は左腕を大きく使っていたが、現在は肩から入るような動きで身体全体を使い、そこから力強くボールを放っているという。
「吉井(理人:前ロッテ監督)さんの言葉を借りると“昭和のピッチャー”という表現になるかもしれません。これは褒め言葉です。190センチを超える身体を理想的に使っています」
さらに、今後は投球回数も少しずつ増えていくのではないかと見通しを示した。二刀流復帰に向けて、球団も慎重にプランを立てているはずだと語る。
「ドジャースのスタッフも、二刀流については若干手探りな部分があると思います。だから丁寧に丁寧に進めているのではないでしょうか」

元指揮官へ託した佐々木の成功への想い
続いて話題は、昨年日本人選手2人目のワールドシリーズMVPに輝いた山本由伸投手、そして佐々木朗希投手へと及ぶ。今季ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場し、さらに開幕投手を務めた山本投手について斎藤氏は、
「まだまだこれからグッと上がってくると思います。日本の時の彼を知っている人は“もっと凄いよ”と思うかもしれないけれど、何の心配もしていません」と断言する。

補足としてドジャースはここ2年ワールドシリーズを戦い、30チームで最も長くプレーしていただけではなく、それぞれ韓国・日本と異国で開幕を迎えていたことにも言及。
これによる休みの短さや調整の難しさを説きつつも、山本投手のこれからの躍進に太鼓判を押した。
そして、2年目のシーズンを戦っている佐々木朗希投手への言葉には、ひときわ熱がこもる。同じ東北出身の“後輩”にもあたる佐々木投手とは今年あるやりとりがあったことを明かしてくれた。
「スプリングキャンプからドジャースのキャンプを見れて、その後エンゼルスとのオープン戦に『斎藤さんですよね?』と挨拶に来てくれたんです。
面識がなかったわけではないですけど来てくれて、すごく嬉しいじゃないですか。それで、朗希頑張れ!って一層思うようになったんですよ」

そしてある縁から強いバックアップを実現させた。ドジャースでベンチに入っている一人がGM補佐を務めるロン・レネキー氏。斎藤氏が11年にブリュワーズでプレーしていた時の監督である。
「レネキーには『朗希は2011年の(東日本)大震災で、まだ幼い彼が被災して大きな経験をしているんだ』という話をしました。
野球の技術も大事だけれど、彼のバックボーンや心の傷みたいなものを理解して、ドジャースの関係者が寄り添って伝えていってほしいなと。それが今チーム内でも少しずつ伝わっている気がして、僕の中では凄く嬉しいんです」
現役時代の指揮官とのつながりが佐々木投手のバックアップにつながっている
ドジャースは佐々木投手を一戦力としてだけでなく、一人の若者の心に寄り添う球団であってほしい。そんな斎藤さんの温かい人間性と、ドジャースという組織への信頼が垣間見えるエピソードだった。
質問コーナーでは“準備”についてアドバイス
トークショー後半では、来場者からの質問コーナーも行われた。ここで印象的だったのは、斎藤氏が“元メジャーリーガー”としてだけはなく、一人の野球人として誠実に言葉を返していたことだった。
まず寄せられたのは、大谷翔平の二刀流に関する質問だった。
質問したファンは、実際に現地観戦した試合で大谷選手が投手のみで出場していた試合だったという。その上で、「二刀流をやるなら翌日を休ませるべきなのか、それとも投手だけ・打者だけの日を作るべきなのか」と疑問を投げかけた。
これに対して斎藤氏は少し考えながら、自身の見解を示した。
「大谷選手は“二刀流”としてメジャーに行ったわけですよね。彼自身、いつ何が起きてもいいっていう覚悟を持って行ってるはずなんです。だから僕は彼がやりたいって言うならやらせるべきかと考えています。
だって、どこのサンプルにもないんですよ。前例がない。だから“普通はこうする”っていう考え方を当てはめる必要がないと思うんです。彼が望む形を、一番大事にするべきじゃないかなって僕は思います」

続いては現在野球で外野手をやっている少年からは、「試合に入る時の気持ちの整理について教えてほしい」という質問も飛んだ。
斎藤氏は「これは長くなるぞ」と笑いながらも、丁寧に言葉を選んでいく。
「多分聞きたいのはメンタルの部分だと思うんですけど、やっぱり大事なのは“準備”なんですよね」
まずは普段からのウォーミングアップやストレッチを丁寧に行い、「今日は体がちゃんと動く」という感覚を確認すること。そして外野手なら風や球場のクッション、打者なら相手投手のタイミングをネクストバッターズサークルから頭に入れておくことの重要性を説いた。
「今日、自分ができる最大のものを出そうとすると、大抵空回りするんです。だから“今日やれること”に集中する。まず自分がやるべきことを冷静に整理することが大事なんじゃないかなと思います」

自身の現役時代を振り返りながら、こう続けた。
「僕なんて、マウンドで2つも3つも考えられなかったです。“今日は低めに投げよう”とか、“今日はコースを丁寧に行こう”とかそれぐらい。本当に一つだけでした。
打つ時はタイミング、守備の時は一個だけとか。それぐらいの集中の方が、人って自然に動けると思うんですよね」
メジャーで世界の強打者と戦ってきた男の言葉だったからこそ、そのアドバイスはより説得力を持って会場へ響いていた。
トークショーは約1時間にわたり行われ、大盛況のまま終えた。
斎藤氏が紡いだ言葉の端々からは、20年前から変わらないドジャースへの深い愛着と、未来を担う後輩たちへの熱いエールが終始溢れていた。
かつてパイオニアたちが拓いた道は、より一層強固な絆で次の世代へと受け継がれている。ファンにとってもそれを確信できるような格別な時間となった。
(了)
【関連記事】
ドジャース・山本由伸が日本のファンとオンライン交流 ドジャースファンクラブが生んだ特別な30分
ドジャースが日本公式ファンクラブの26年度詳細を発表!日本のファンの情熱に応えるコンテンツは、次世代のファン獲得も目標に
「MLB Tokyo Series Fan Fest presented by Guggenheim」斎藤隆さんと井戸田潤さんがトークショーで挙げた注目の日本人メジャーリーガーは?